神戸・旧居留地に佇む名建築「チャータードビル」の歴史と現在の魅力
港町・神戸の海岸通を歩くと、ひときわ重厚な石造りの佇まいで視線を引きつける洋館が存在します。かつてイギリス屈指の大手銀行が拠点とした「チャータードビル(旧チャータード銀行神戸支店)」です。
異国情緒あふれる神戸旧居留地において、昭和初期の華麗な意匠を今に伝える屈指のランドマークとして知られています。激動の昭和、戦争、そして阪神・淡路大震災を乗り越え、現在も洗練された商業空間として息づく名建築の歩みと見どころを現地取材の視点から紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:1938年(昭和13年)竣工の旧英国系銀行建築で、名匠J.H.モーガンが手掛けた古典主義様式の傑作。
- 要点2:古代ギリシャのイオニア式列柱や大理石の吹き抜けなど、随所に贅を尽くした意匠が良好な状態で現存。
- 要点3:かつての金庫室や開放的なフロアを活かしたカフェ・ショップが入居し、神戸近代建築散策の必須スポットとして定着。
【歴史と背景】英国系銀行の誇りを宿す「旧居留地9番地」の歩み
神戸港の開港とともに形成された旧居留地は、整然とした碁盤の目状の街路と欧米直輸入の建築群が並ぶ国際貿易の心臓部でした。その南端、港に面した「旧居留地9番地」に建つのがチャータードビルです。
施主であるチャータード銀行(現スタンダードチャータード銀行)は、大英帝国のインド・オーストラリア・中国貿易を支えた老舗金融機関でした。日本国内では横浜に次ぐ重要拠点として神戸支店が開設され、1938年(昭和13年)に現在のSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)地上4階・地下1階のビルが完成しました。
第二次世界大戦の戦火を免れた同ビルは、戦後も外国為替や貿易金融の拠点として稼働し続けます。1995年の阪神・淡路大震災でも倒壊を免れ、綿密な補修と耐震補強工事を経て、神戸の復興を見守るシンボルとしてその姿を今に伝えています。
【建築の見どころ】名匠J.H.モーガンが魅せるアメリカン・ルネサンスの造形美
チャータードビルの設計を担当したのは、横浜や神戸で数多くの名建築を残したアメリカ人建築家J.H.モーガン(Jay Herbert Morgan)です。横浜山手の「ベーリック・ホール」や「旧日四商会ビル」などを手掛けたモーガンが、晩年に心血を注いだ傑作のひとつに数えられます。
外観の最大の特徴は、重厚なアメリカン・ルネサンス様式(新古典主義)です。正面ファサードには、古代ギリシャ建築に由来する優美なイオニア式オーダー(渦巻き装飾の円柱)がそびえ立ち、見る者に圧倒的な威厳と安定感を与えます。
外壁には良質な石材と装飾テラコッタが巧みに配され、2階から3階へと連続する縦長のアーチ窓がリズミカルな陰影を生み出しています。細部に目を向けると、幾何学的なレリーフや細やかなモールディングが施されており、昭和初期の高度なクラフトマンシップを体感できます。
【内部空間の魅力】銀行時代の面影を残す大理石ホールと重厚な金庫室
チャータードビルの真価は、外観だけでなく内部の贅沢な空間設計にも宿っています。一歩足を踏み入れると、かつて銀行の営業室として使われていた吹き抜けの高い天井が広がり、当時の栄華を物語る開放感に包まれます。
フロアを支える柱には上質な大理石が惜しみなく使われており、経年変化によって深みを増した石肌が独特の陰影を演出。かつて顧客を迎えたカウンターの痕跡や、重厚な真鍮製パーツ、木製建具の細やかな細工も見逃せません。
さらに地下には、分厚い防盗扉を備えた頑丈な旧金庫室が保存されています。海外との貿易決済を担った国際銀行ならではの堅牢な造りであり、当時の神戸が国際金融都市としていかに躍動していたかを無言のうちに物語る貴重な歴史遺産です。
【現在のテナント事情】洗練されたカフェやショップが集う生きたヘリテージ
チャータードビルは単なる保存建築にとどまらず、民間テナントが活発に入居する「生きた建築」として機能しています。
かつて吹き抜けの大空間を活用した名物カフェバー「E.H BANK」が全国的な人気を博し、銀行建築を活かしたリノベーションの先駆けとして話題を集めました。現在もそのハイセンスな空間構造を受け継ぎ、上質なカフェ、ブライダルサロン、高感度なアパレルショップやデザインオフィスなどが拠点を構えています。
クラシックな建築美と現代のトレンドが調和した空間は、日常使いのティータイムから特別な記念日まで幅広い層を魅了しています。歴史の重みを感じさせる高い天井の下で味わう一杯のコーヒーは、他では得がたい贅沢な時間を提供してくれます。
【神戸近代建築散策】海岸通を起点に巡るレトロビル探訪ルート
神戸観光や休日の街歩きにおいて、チャータードビルを起点とする海岸通・旧居留地の近代建築めぐりは鉄板のコースです。周辺には徒歩数分圏内に日本を代表するレトロ建築が密集しています。
おすすめの散策ルート:
1. チャータードビル(旧居留地9番地):まずは外観のイオニア式列柱と細部装飾を鑑賞。
2. 神港ビルヂング(旧居留地8番地):アール・デコ様式の塔屋が特徴的な隣接ビル。
3. 商船三井ビルディング(旧居留地・海岸通):渡辺節が手掛けた圧巻の石造り建築。
4. 旧居留地38番館(旧ナショナル・シティバンク・オブ・ニューヨーク神戸支店):ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の重厚な名作。
5. 神戸郵船ビル:銅板葺きのドームが美しい海岸通の象徴的建造物。
港の潮風を感じながら通りを歩けば、100年前の異国情緒とモダンな都市機能が美しく溶け合う神戸ならではの景観を存分に堪能できます。
【チャータードビル】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:チャータードビルの館内は見学できますか?
A1:オフィスや商業店舗が入居する現役のテナントビルのため、ビル全体の自由見学ツアー等は常時開催されていません。ただし、1階などのカフェや一般向け店舗を利用する形で、営業フロア内の素晴らしい内装や吹き抜け空間を鑑賞することが可能です。
Q2:チャータードビルへのアクセス方法は?
A2:JR・阪神「元町駅」東口から南へ徒歩約8分、地下鉄海岸線「旧居留地・大丸前駅」から徒歩約5分です。神戸市中央区海岸通のメインストリート沿いに位置しており、大丸神戸店からも徒歩圏内です。
Q3:設計者J.H.モーガンの他の代表作はどこで見られますか?
A3:横浜山手にある国指定重要文化財「ベーリック・ホール」や「山手111番館」、「旧根岸競馬場一等馬見所」などが有名です。関西エリアではチャータードビルがモーガンの円熟期の腕前を堪能できる貴重な現存建築となっています。
まとめ:時を超えて輝きを放つ神戸のヘリテージ
昭和初期の金融激動期に建てられたチャータードビルは、単なる歴史的建造物という枠組みを超え、神戸の街とともに呼吸を続ける文化的資産です。
名匠J.H.モーガンが残した古典美のディテール、大理石と吹き抜けが織りなす空間美、そして時代に合わせて生まれ変わるショップやカフェの活気。港町・神戸の深みある魅力を肌で感じるために、次の週末は海岸通の名建築へ足を運んでみてはいかがでしょうか。 (出典: チャーター ド ビル(Yahoo!ニュース))