枕草子「宮に初めて参りたるころ」品詞分解と敬語・心情を徹底解説
高校の古典授業や定期テスト、大学入試の頻出出典である『枕草子』の中でも、屈指の名場面として知られるのが「宮に初めて参りたるころ」です。のちに宮廷随筆の名手として名を馳せる清少納言が、中宮定子のもとへ出仕した直後の初々しい緊張感と、定子の圧倒的な美しさ・優しさに触れた感動が生々しく綴られています。
しかし、いざ試験対策や本文解読に取り組むと、「助動詞の識別」「主語の省略と敬語の対象」「清少納言の細やかな心情変化」など、つまずきやすい文法・読解ポイントが凝縮されています。本記事では、テストで確実に得点するための品詞分解から現代語訳、敬語の整理、心情記述の解答テクニックまでをわかりやすく徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「落ちぬべければ」「仰せらるる」など、テスト頻出助動詞の意味・活用形・識別ポイントを完全網羅
- 要点2:敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)と「誰から誰への敬意」かを明確にし、主語判別の迷いを解消
- 要点3:恥ずかしさから憧憬・敬慕へと移り変わる清少納言の心理変化と、定期テスト記述問題の模範解答を提示
【背景と登場人物】清少納言と中宮定子の関係性|宮仕えの緊張と時代背景
『枕草子』の執筆者である清少納言が、一条天皇の皇后(中宮)である藤原定子に出仕したのは正暦4年(993年)冬、清少納言が20代後半の頃とされています。当時の宮廷サロンは当代一流の貴族や才女が集う華やかな社交場であり、地方官の娘であった清少納言にとって、雲の上の存在である定子の前へ出ることは想像を絶する重圧でした。
この章段には、定子の兄である藤原伊周(内大臣)をはじめとする高官たちも登場します。彼らが定子の御前に現れた際、あまりの身分の高さと洗練された空気に圧倒され、御簾(みす)の奥へと逃げ惑う清少納言の姿は、後の自信に満ちた鋭い筆致とは対照的であり、本章段の大きな魅力となっています。
作品を深く読み解くためには、「至高の美と教養を持つ中宮定子」と、「初出仕で極度の恥ずかしさと緊張に震える清少納言」という対比関係を頭に入れておくことが不可欠です。
【本文と現代語訳】「宮に初めて参りたるころ」の場面展開と全訳
定期テストや入試対策の土台となる、代表的な冒頭から中盤までの本文と現代語訳を対照して確認します。
【原文】
宮に初めて参りたるころ、もののはづかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜夜参りて、三尺の御几帳の後ろに候ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふ。口惜しう、手をさへからのおほけなくこそ思ひたまへらるれ。
夜いたう更けて、「御格子参りてむ。これ開けよ」と仰せらるるに、女房のまゐりて上げなどするを、まづ我から引き下ろさむと、引き寄するほどに、袖の口、手など、あらはに見えつるを、いとあはれ、らうたげなりと御覧ぜらるるも、知らず、かしこく思ひまどふ。
【現代語訳】
中宮様(定子)の御所に初めて出仕したころ、なんとなく気恥ずかしいことが数え切れないほど多く、涙もこぼれ落ちてしまいそうなので、夜ごとに参上しては、(定子の前にある)三尺の几帳の後ろにお控えしていると、(中宮様は私の緊張をほぐそうとして)絵などを取り出して見せてくださる。(しかし私は)情けなくも、手までもが中宮様にお見せするには不相応でおそれ多いと思い申し上げております。
夜がたいそう更けて、(中宮様が)「御格子をお上げさせよう。これを開けなさい」とおっしゃるので、女房が参上して格子を上げるなどするのを、(私は姿を見られるのが恥ずかしく)自分から先に引き下ろそうと、(格子を)引き寄せるうちに、着物の袖口や手などが、(中宮様や周囲に)まる見えになってしまったのを、(中宮様が)たいそう気の毒でかわいらしいとご覧になっているのも知らず、恐れ多くてうろたえております。
【徹底品詞分解】「夜いたう更けて」など頻出文の文法を完全解明
テストでそのまま問われる重要箇所の品詞分解を詳細に解説します。語の品詞、基本形(終止形)、活用形、意味を一つひとつ正確に押さえましょう。
① 冒頭文:宮に初めて参りたるころ
- 宮:名詞(中宮定子の御所)
- に:格助詞
- 初めて:副詞
- 参り:ラ行四段動詞「参る」の連用形(謙譲語)
- たる:完了・存続の助動詞「たり」の連体形
- ころ:名詞
② 頻出文:涙も落ちぬべければ
- 涙:名詞
- も:係助詞
- 落ち:タ行上二段動詞「落つ」の連用形
- ぬ:強意(確述)の助動詞「ぬ」の終止形
- べき:推量の助動詞「べし」の已然形
- れば:順接確定条件(原因・理由)の接続助詞「〜ので」
③ 頻出文:夜いたう更けて
- 夜:名詞
- いたう:副詞(形容詞「いたし」の連用形「いたく」のウ音便/意味:「たいそう」「ひどく」)
- 更け:カ行下二段動詞「更く」の連用形
- て:接続助詞
④ 頻出文:絵など取り出でて見せさせ給ふ
- 絵:名詞
- など:副助詞
- 取り出で:ダ行下二段動詞「取り出づ」の連用形
- て:接続助詞
- 見せ:サ行下二段動詞「見す」の連用形
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形(最高敬語の一部)
- 給ふ:尊敬の補助動詞「給ふ(ハ行四段)」の終止形
【助動詞の識別と古典文法】「ぬ・べし・たり・らる」の見分け方
本章段で出題率が極めて高いのが、複数の意味を持つ助動詞の識別問題です。特に以下の4つの助動詞は確実に区別できるように整理しておきましょう。
1. 「落ちぬべければ」の「ぬ」と「べき」
「ぬ」の直後に推量系の助動詞「べし」が続く場合、この「ぬ」は打消ではなく強意(確述)「きっと〜・〜してしまう」となります。したがって「落ちぬべければ」は「(涙が)きっと落ちてしまいそうなので」と訳出します。
2. 「見せさせ給ふ」の「させ」の識別(使役か尊敬か)
「せ給ふ」「させ給ふ」という形があるとき、直前に「〜に(使役の対象)」がない場合は最高敬語(二重尊敬)となります。ここでは定子自身が絵を取り出して清少納言に見せているため、使役「〜させる」ではなく純粋な尊敬「お見せになる」と解釈します。
3. 「思ひたまへらるれ」の「るれ」(受身・可能・自発・尊敬)
「思ふ」「泣く」「偲ぶ」など心情を表す動詞に接続する「る・らる」は、自然とそう思われるという自発の意味になります。「思ひたまへらるれ」は「自然と思われてしまいます」と訳します。
4. 「仰せらるる」の「らるる」
主語が中宮定子であり、動詞「仰す(おっしゃる)」という尊敬語に重なっているため、敬意を高める尊敬の助動詞です。
【敬語の種類と対象・主語の判別】誰から誰への敬意かを整理
古典読解で最も失点しやすい「敬語の方向」と「省略された主語」の対応関係を整理します。随筆作品であるため、地文の敬意の発話者はすべて筆者(清少納言)です。
■ 主要な敬語動詞・助動詞の一覧
- 「参り」(謙譲語):清少納言から中宮定子への敬意(「参上する」)
- 「候ふ」(謙譲語/丁寧語):清少納言から中宮定子への敬意(「お仕えする」「お控えする」)
- 「思ひたまへ」(謙譲語):清少納言から中宮定子への敬意(「思い申し上げる」)
- 「見せさせ給ふ」(最高敬語):清少納言から中宮定子への敬意(「お見せになる」)
- 「仰せらる」(尊敬語):清少納言から中宮定子への敬意(「おっしゃる」)
- 「御覧ぜらる」(尊敬語):清少納言から中宮定子への敬意(「ご覧になる」)
■ 主語の判別テクニック
「〜に」「〜を」などの接続助詞の前後で主語が切り替わります。尊敬語(給ふ・仰す・御覧ず)が使われていれば主語は中宮定子、自発・謙譲の表現(思ひたまへらる等)が使われていれば主語は清少納言と判断するのが鉄則です。
【心情記述と定期テスト対策】清少納言の心理変化と重要古語
定期テストの記述問題で高確率で狙われるのが、清少納言の心情変化と重要古語の意味です。
■ 清少納言の心情の移り変わり
出仕当初の清少納言は、「もののはづかし(何となく気恥ずかしい・気が引ける)」と感じ、緊張のあまり涙が出そうになっていました。定子が気遣って絵を見せてくれても、自分の手を見られることすら「からのおほけなし(身分不相応でおそれ多い)」と委縮しています。
しかし、定子の優雅な振る舞いや、自分を温かく見守る「らうたげなり(かわいらしい)」という眼差しに触れるにつれ、恥ずかしさは中宮定子への強い敬慕と憧れへと変化していきます。記述問題では「当初の気後れ・緊張」から「定子の気品と温かさに触れたことによる畏敬と心酔」への対比を意識して解答を組み立てましょう。
■ 覚えておくべき重要古語
- もののはづかし:なんとなく気恥ずかしい、気が引ける
- おほけなし:身分不相応だ、恐れ多い
- あらはなり:まる見えだ、露骨だ
- らうたげなり:かわいらしい様子だ、可憐だ
- かしこし:恐れ多い、もったいない
- いたう(いたし):たいそう、ひどく(打消を伴うと「それほど〜ない」)
【宮に初めて参りたるころの品詞分解】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「宮に初めて参りたるころ」の「参り」の敬語の種類と敬意の対象は誰ですか?
A1:「参り」は謙譲語です。出仕した主体である「清少納言」を低めることで、参上先である「中宮定子」に対する敬意を表しています。敬意の方向は「清少納言 → 中宮定子」です。
Q2:「夜いたう更けて」の「いたう」はなぜウ音便化しているのですか?
A2:形容詞「いたし」の連用形「いたく」の「く」が「う」に変化したウ音便です。「ひどく」「たいそう」という意味の副詞的な働きをしています。
Q3:テストの心情説明問題で「清少納言が格子を引き下ろそうとした理由」を聞かれたらどう答えるべきですか?
A3:「夜が明けて御格子を上げられると、明るい光の中で周囲の女房や定子に自分の姿を見られてしまうのが恥ずかしく、姿を隠したかったから」と答えるのが適切です。
まとめ:『枕草子』宮に初めて参りたるころの読解ポイント
『枕草子』の「宮に初めて参りたるころ」は、助動詞の識別(ぬ・べし・さす・らる)や敬語の方向判別といった古典文法の基本要素が網羅された、まさにテスト頻出の重要単元です。
単に現代語訳を暗記するだけでなく、「なぜその訳になるのか」を品詞分解のレベルで理解し、清少納言のリアルな心理描写を読み解くことが得点力アップへの最短ルートとなります。本記事のポイントを活用し、定期テストや入試対策で確実な得点源にしてください。 (出典: 宮 に 初めて 参り たる ころ 品詞 分解(Yahoo!ニュース))